微分積分学
大学1、2年生で、数学科に限らず理系のかなりの割合の学生と一部の文系がやる科目が微分積分学です。
微分積分学はいわゆる解析学というやつで、関数の局所的な性質や大域的な性質、およびその関係を調べるものです。例えば、微分する(局所的な性質を調べる)ことによって関数の大域的な増減がわかったり、積分する(局所的なブロックを積み上げる)ことで面積や体積(大域的な性質)がわかったりします。
内容としては、いわゆる高校で言うところの数学Ⅱ、数学Ⅲでやった内容の続きというか、大学レベルの厳密な記述によるリファインからスタートします。
と言っても、大学によっては適当に計算問題だけ解けるようにして済ませてしまうかもしれませんが……。
本格的にやるところでは、実数の構成から始まり、ε-δ論法というものを導入して高校で曖昧に済ませてきた極限という概念を厳密に定式化します。
さらには連続性、微分可能性、可積分性といった概念も厳密に定式化し、一変数のみならず多変数の関数について微積ができるようにしていきます。
高校までの計算主体の数学と異なり、確かに計算という要素は大いにあるものの、厳密な論理に基づいた議論が進行していくため、面食らう人も多いのではないかと思われます。
その代わり、高校まで漠然と抱いていた「なぜ」に対してクリアな解答が得られるため、面白いと感じる人はどんどん深みに嵌っていくような中毒性があります。
微分積分は理論上だけでなく実用上も極めて強力なツールです。他の自然科学や経済学などの社会科学においても基本言語として使われ、絶大な威力を発揮します。言わば現代社会を支えると言っても過言ではない分野の一つです。
線形代数
やはり大学1、2年生でかなりの数の理系と一部の文系が学ぶことになる科目です。
高校数学でベクトルというものを扱ったと思いますが、平面ベクトルや空間ベクトルまでだったと思います。
大学ではより一般の 次元ベクトルを取り扱います。
さらに、今は複素数平面と入れ替わる形で高校数学のカリキュラムから削除されてしまったのですが、行列というものが登場します。
これらベクトルと行列をまず主役として展開されていく科目が線形代数です。
科目名の通り代数色が強いですが、ベクトルという概念は幾何学的に捉えることもできるため、幾何学の要素もあります。
例えば、一次連立方程式を解くとき、一般の場合は 変数
本の式になりますが、この場合も行列を使うことでスマートに定式化でき、機械的に解くことができるようになります。
他には例えば、行列の作用が定数倍になるようなベクトルを固有ベクトルと言いますが、固有ベクトルを求めることによって行列の作用がわかりやすくなります。数学に限らず物理などでも用いられます。
また、より高度なレベルになると一般の線形空間というものを定義します。これはベクトルや行列で表現できるような「まっすぐな空間」が満たすべき一般的なルールを規定したものです。
一般の線形空間の性質を調べることで、ベクトルや行列の概念をより幅広い対象(例えば、関数の集合や数列など)にも応用できるようになります。抽象化、一般化の効力を見ることができるでしょう。
集合と位相
おそらく数学科以外では馴染みがない科目かと思いますが、現代数学の土台を成す二大必須言語の一つです。
二大必須言語のもう一つは圏と関手と言いますが、これは普通より高度なレベルの数学で用いるものであるため、当面はクリティカルなものではありません。
しかし、集合と位相に関しては別です。現代数学ではほとんどあらゆる概念が集合と位相を用いて定義されているため、これを修めない限りはまず先へ行くことができません。
そして、微分積分や線形代数と大きく違うのは、計算をほとんど必要としない数学であるということです。
微分積分や線形代数はなんだかんだ言っても道具としてきちんと計算できることが大切です。高校までの知識があることも大きなアドバンテージになります。
一方で、集合と位相を学ぶにあたっては高校数学までの予備知識はほとんど必要ありません。中学生や高校生でも、論理を理解できるなら、一歩ずつ辿ることで理解できるようになっています。ただし、直観に頼っていい加減に進めることはできず、定義通りに概念を取り扱い、論理を丹念に追って証明をきちんと理解することが求められます。
その意味で、ものすごく大学数学らしい分野です。高校までの数学しか知らない人には、まったく違う世界に見えるかもしれません。
初学者には苦労が多いかもしれませんが、集合と位相を乗り越えた先には広大な現代数学の地平が拓けています。
あらゆる分野の土台となるため、当ページでも第一に学んで欲しいコンテンツとして取り扱います。
位相についてはしばらく後回しにしても構いませんが、集合については確実に学んで頂けるとその先が捗るかなと思います。
どんな分野か軽く説明すると、集合とは「ものの集まり」のことです。色々な種類の集合の構成方法を学んでいくことで、様々な数学的対象が集合を使って定義できるようになります。
それから、写像という概念を学びます。これは関数を一般化したもので、集合 から集合
への対応を指します。こちらも極めて基本的な概念で、やはり写像を用いて種々の数学的対象を定義していくのに使います。
そして位相です。位相とは「空間」という概念を記述する言葉です。例えば「距離」であったり、「近さ」や「遠さ」、「連続性」といった概念が位相を用いることで厳密に定義されます。
集合は、そのままではただの「ものの集まり」ですが、位相を入れることによって「空間」とみなすことができ、「空間」に対しては幾何学を考えることができるようになります。数学では色々なものを空間として考えるので、位相という概念は陰ながら色々な場所に現れてきます。
複素解析
大学でまず最初に習う微分積分は実変数の関数に対する解析ですが、複素変数の関数に関する解析を取り扱う科目が複素解析です。
複素変数の関数が微分可能であるとき、実は無限回微分可能であるという非常に良い性質を持っており、このことから種々の強力な定理が導かれます。
実解析は結構ごちゃごちゃしていて不気味な関数などもたくさん現れるのですが、性質の良い解析関数(微分可能な複素関数)から導かれる結果はすっきりとしたものになっていて、現代数学の中でも非常に美しい分野と言われています。
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