大学数学

論理記号.2 否定、かつ、または、~ならば、同値記号

\lnot 否定

P を命題とすると、P否定

\lnot P

と書きます。

否定 2 回行うと元の命題と一致します。すなわち、

\lnot \lnot P = P

が成り立ちます。


Ex.SetTop.1.2.1.

命題 P「自然数 n は偶数である」の否定は、命題 \lnot P 「自然数 n は偶数でない」となり、この場合はすなわち命題 \lnot P 「自然数 n は奇数である」となります。
もう一度否定してみましょう。命題 \lnot \lnot P 「自然数 n は奇数でない」となり、命題 P 「自然数 n は偶数である」と一致します。

命題 Qx^2-2x+2=0 」の否定は、命題 \lnot Qx^2-2x+2 \neq 0 」です。\lnot \lnot Q = Q は明らかでしょう。


このように単純な例だと命題の否定を記述するのはそんなに難しくないですが、複雑な命題になってくると、命題の否定を正しく記述できない方が出て来ます。

複雑な命題に対する否定の作り方については、一通り論理記号を紹介してから、また別の記事(論理記号.6 否定の作り方)で改めて取り扱いたいと思います。

\land かつ

命題 P,Q に対して、P かつ Q

P \land Q と書きます。


Ex.SetTop.1.2.2.

命題 P 「自然数 n2 の倍数である」、命題 Q 「自然数 n3 の倍数である」とすると、命題 P \land Q 「自然数 n2 の倍数であり、かつ 3 の倍数である」となります。
ここで、23 は互いに素ですので、すなわち命題 P \land Q 「自然数 n6 の倍数である」となります。

命題 R「実数値関数 f(x) は連続である」、命題 S「実数値関数 f(x) は微分可能である」とすると、命題 R \land S 「実数値関数 f(x) は連続であり、かつ微分可能である」となります。
実は微分可能な関数は連続なので、命題 R \land S は命題 S と同値になります。


\lor または

命題 P,Q に対して、P または Q

P \lor Q と書きます。

ここで注意ですが、数学においては P または Q というとき、P と Q が同時に成立することも許容されます。日常生活では片方しか成立しないというニュアンスで使われることもありますが、数学では同時に成立することも認めますので気を付けておきましょう。


Ex.SetTop.1.2.3.

命題 P 「自然数 n は偶数である」、命題 Q 「自然数 n は奇数である」とすると、命題 P \lor Q 「自然数 n は偶数であるかまたは奇数である」となります。
ここで、すべての自然数は偶数か奇数のどちらかですので、すなわち命題 P \lor Qn は任意の自然数である」となります。

命題 R「実数値関数 f(x) は連続である」、命題 S「実数値関数 f(x) は微分可能である」とすると、命題 R \lor S 「実数値関数 f(x) は連続であるか、または微分可能である」となります。
実は微分可能な関数は連続なので、命題 R \lor S は命題 R と同値になります。


\Rightarrow ~ならば

命題 P,Q に対して、P ならば Q

P \Rightarrow Q と書きます。

数学の定理などは、一般にある条件 P を仮定して P \Rightarrow Q を証明するものが多いです。ですので、P \Rightarrow Q が主張されているときには、それが真なのか偽なのかに注意を払う必要があります。

命題 P \Rightarrow Q があるとき、


Def.SetTop.1.2.4.

命題 Q \Rightarrow P を命題 P \Rightarrow Q の
命題 \lnot P \Rightarrow \lnot Q を命題 P \Rightarrow Q の
命題 \lnot Q \Rightarrow \lnot P を命題 P \Rightarrow Q の対偶


と言います。


Ex.SetTop.1.2.5.

命題 P 「自然数 n6 の倍数である」、命題 Q 「自然数 n2 の倍数である」とすると、命題 P \Rightarrow Q 「自然数 n6 の倍数であるならば、2 の倍数である」となります。確かに 6 の倍数は 2 の倍数でもありますので、この命題は真となります。

逆を考えてみましょう。
命題 Q \Rightarrow P 「自然数 n2 の倍数であるならば、6 の倍数である」となります。
この命題は偽です。命題が偽であることを示すためには、反例を挙げればよいです。例えば、22 の倍数ですが 6 の倍数ではありません。「逆は必ずしも真ならず」ということです。

裏を考えてみましょう。
\lnot P \Rightarrow \lnot Q 「自然数 n6 の倍数でないならば、2 の倍数でない」となります。
この命題は偽です。反例を挙げてみましょう。例えば、26 の倍数ではないですが、 2 の倍数です。

対偶を考えてみましょう。
\lnot Q \Rightarrow \lnot P 「自然数 n2 の倍数でないならば、6 の倍数でない」となります。
この命題は真です。2 の倍数でないということは奇数なので、確かに 6 の倍数にはなり得ません。


上のEx.SetTop.1.2.5.で、命題 P \Rightarrow Q とその対偶 \lnot Q \Rightarrow \lnot P の真偽が一致しましたが、これは偶然ではありません。

一般に、次が成り立ちます。


Prop.SetTop.1.2.6.

命題 P \Rightarrow Q とその対偶 \lnot Q \Rightarrow \lnot P の真偽は常に一致する。


ちなみに、逆の対偶は裏になりますので、の真も常に一致します。

さて、ここで注意がありますので述べておきます。命題 P \Rightarrow Q の真偽を判定するとき、もし P が真でないとしたらどうなるでしょうか?

P \Rightarrow Q が真であるというのは、「もし P が真だとしたら Q が成り立つ」ということです。

P が真でないときのことについては何も言っていません。何も言っていないわけですから、常に正しいと考えます。

すなわち、P が真でないときは、Q の真偽によらず、P \Rightarrow Q は真であると考えます。このことに注意して下さい。

整理しましょう。

命題 P \Rightarrow Q が真であるということは、「命題 P が真であり、かつ命題 Q が真である」または「命題 P が真でない」ということです。

すぐ後で同値記号について説明しますが、それを使って上の事実を論理式で書くと次のようになります。

(P \Rightarrow Q) \Leftrightarrow ((P \land Q) \lor \lnot P)

さらに論理演算(後の記事です)を用いると、

  ((P \land Q) \lor \lnot P) \Leftrightarrow ((P \lor \lnot P) \land (Q \lor \lnot P) )  \Leftrightarrow (\lnot P \lor Q)

したがって、次の関係が成り立ちます。


Prop.SetTop.1.2.7.

(P \Rightarrow Q) \Leftrightarrow (\lnot P \lor Q)


言葉で言い表すと、「P ならば Q である」ということは、「P でないまたは Q である」ということです。

この関係を覚えておくと、 P \Rightarrow Q 否定を考えるときに混乱しないで済みます。

よくある間違いとして、 P \Rightarrow Q の否定を P \Rightarrow \lnot Q とか \lnot P \Rightarrow  Q とか \lnot P \Rightarrow \lnot Q とか考えてしまう人がいます。これらはどれも正しくありません。

正しくは、 P \Rightarrow QP ならば Q である)の否定は P \land \lnot QP であるが Q でない)です。

どうしてそうなるのか、上の関係式を知っていると納得しやすいでしょう。( \lnot (\lnot P \lor Q) = (P \land \lnot Q) が成り立つことによります)


Ex.SetTop.1.2.8.

命題 P1=-2 」、命題 Qx^2 = 2 を満たす実数 x は有理数である」とします。

命題 P も命題 Q もそれぞれ偽です。しかし、命題 P が偽であることから、命題 P \Rightarrow Q 「 1=-2 ならば、x^2 = 2 を満たす実数 x は有理数である」は真となります。

命題 R 「自然数 n6 の倍数である」、命題 S 「自然数 n2 の倍数である」とします。

命題 R \Rightarrow S 「自然数 n6 の倍数であるならば、2 の倍数である」の否定は、R \land \lnot S 「自然数 n6 の倍数であり、かつ 2 の倍数でない」です。


\Leftrightarrow 同値記号

既に何度か断らずに同値という言葉とこの記号を使ってしまっていますが、ここできちんと説明しておきます。

P \Rightarrow Q と  Q \Rightarrow P同時に成り立つとき、PQ は同値であると言い、

P \Leftrightarrow Q

と表します。

P \Leftrightarrow Q が成り立つということは、「P が真であるとき、またそのときに限り Q は真である」ということを意味します。


Ex.SetTop.1.2.9.

命題 P 「自然数 n2 の倍数である」、 命題 Q 「自然数 n3 の倍数である」、命題 R 「自然数 n6 の倍数である」とします。

2 の倍数かつ 3 の倍数であれば 6 の倍数ですし、またその逆も成り立ちます。したがって、命題 P \land Q と命題 R は同値です。これを論理式で書くと、

(P \land Q) \Leftrightarrow R

となります。


 

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