大学数学

数の構成.2 自然数.2 自然数の加法.1 和の定義と数学的帰納法

前回からの約束事と帰結

前回述べた通り、以下ではペアノシステムとして (N,0,S) を採用し、集合 N\mathbb{N} と表すことにします。

さて、続きを始める前に、ペアノシステムが同型を除いてただ一つであることを示したProp.SetTop.4.1.6.の証明を吟味してみます。

Prop.SetTop.4.1.6.の証明で、わざわざ同型 \phi \colon N \rightarrow X がただ一つであることを示したのは後で使うからです。

実は証明をよく見ると、(X,x,f) がペアノシステムであるという事実を使っているのは、\phi が同型であることを示すときにだけであることに気付きます。NX の役割を入れ替えて同様の議論を~というくだりです。

ですから、(X,x,f) がペアノシステムとは限らない一般の集合や写像であっても、同型という条件さえ付けなければ、写像 \phi \colon N \rightarrow X

1. \phi(0)=x
2. \phi \circ S = f \circ \phi

を満たすものがただ一つ存在することが示されています。これを命題の形で述べておきましょう。


◆Prop.SetTop.4.2.1.

(\mathbb{N},0,S) はペアノシステムであり、S \colon \mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N} は後者関数であるとする。

X を集合、x \in Xf \colon X \rightarrow X を写像とする。次を満たす写像 \phi がただ一つ存在する。

1.\phi(0)=x
2.\phi \circ S = f \circ \phi


自然数の加法

Prop.SetTop.4.2.1.を用いて、自然数の和を定義します。


◆Prop.SetTop.4.2.2.

任意の n \in \mathbb{N} に対して、写像 \phi_{n} \colon \mathbb{N} \rightarrow \mathbb{N} で次の条件を満たすものがただ一つ存在する。

1.\phi_{n}(0)=n
2.\phi_{n} \circ S = S \circ \phi_{n}


■Prf.

Prop.SetTop.4.2.1.を X=\mathbb{N},x=n,f=S として適用すると、ただちに示される。 □



◇Rem.SetTop.4.2.3.

Prop.SetTop.4.2.2.のニュアンスを述べておきましょう。

ペアノシステムをなす写像、ここでは後者関数 S ですが、それは次の数に移すような写像(「1を加える」ような写像)であると言いました。

1.\phi_{n}(0)=n
2.\phi_{n} \circ S = S \circ \phi_{n}

を見ると、1.は\phi_{n}0n に移すということ、つまり「 0n を加える」という操作とみなすことができます。

そして2.は S によって「1を加えて」から \phi_{n} によって「n を加える」ことと、\phi_{n} によって「n を加えて」から S によって「1を加える」ことが等しいと言っているのです。

しかも \phi_{n} はただ一つしか存在しないのですから、「n を加える」という操作は唯一のものとして確定しているわけです。

このニュアンスを逆手に取り、自然数の和を次のように定義します。



◆Def.SetTop.4.2.4. (自然数の和)

m,n \in \mathbb{N} とする。mn の和 m+n

m+n \overset{\mathrm{def}}{=} \phi_{n}(m)

によって定める。


0 はペアノシステムの定義として含まれている数(空集合です)が、他の n \in \mathbb{N} はまだ任意の元であるという以上の情報を持っていません。

便利のために、0 の次である特別な数 1 を定義します。(ただ一つとか既に 1 を使ってるだろというツッコミはやめて下さい(笑)厳密には、他のものが存在するなら等しくなるという条件で 1 という言葉を使わずに表現できるので循環論法ではありません)


◆Def.SetTop.4.2.5.

S(0) \overset{\mathrm{def}}{=} 1 とする。


ペアノシステムの性質から、S(0) \neq 0 だから 1 \neq 0 に注意しておきます。

数学的帰納法

前回、ペアノシステムの定義には数学的帰納法そのものが入っていると述べましたが、実際に数学的帰納法という手法そのものを定理として証明することができます。

いくつか補題を示してから、数学的帰納法を証明しましょう。


◆Lem.SetTop.4.2.6.

1.\phi_{0} = \mathrm{id}_{\mathbb{N}}
2. \phi_{1} = S
3.任意の n \in \mathbb{N} に対し、\phi_{S(n)} = S \circ \phi_{n}


■Prf.

証明はすべてProp.SetTop.4.2.2.における  \phi_{n} の一意性を用いる。

1.

 \mathrm{id}_{\mathbb{N}}(0)=0 および  \mathrm{id}_{\mathbb{N}}(0) \circ S = S \circ \mathrm{id}_{\mathbb{N}}(0) が成り立つことと、\phi_{0} の一意性からしたがう。

2.

S(0)=1 および S \circ S = S \circ S が成り立つことと、\phi_{1} の一意性からしたがう。

3.

(S \circ \phi_{n})(0)=S(n) および  (S \circ \phi_{n}) \circ S = S \circ (\phi_{n} \circ S) = S \circ  (S \circ \phi_{n}) が成り立つことと、\phi_{S(n)} の一意性からしたがう。 □



◆Lem.SetTop.4.2.7.

S(n)=n+1


■Prf.

S(n)= \phi_{1}(n) = n+1



◆Lem.SetTop.4.2.8.

A \subset \mathbb{N} が以下を満たすならば、A = \mathbb{N}
a. 0 \in A
b. n \in A \Rightarrow n+1 \in A


■Prf.

Def.SetTop.4.1.1.の条件4.について、Lem.SetTop.4.2.7.に注意して (X,x,f)=(\mathbb{N},0,S) として読み替えれば明らか。



◆Thm.SetTop.4.2.9. (数学的帰納法)

各自然数 n に関する命題 P(n) について、次が成り立つとき、すべての自然数 n について P(n) は成り立つ。

a. P(0) が成り立つ
b. P(n) が成り立つならば、P(n+1) が成り立つ


■Prf.

A = \{ n \in \mathbb{N} \mid P(n) \} とする。
仮定より

a. 0 \in A
b. n \in A \Rightarrow n+1 \in A

が言えるので、Lem.SetTop.4.2.8. より A =\mathbb{N} □


 

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