大学数学

数の構成.1 自然数.1 ペアノシステムと自然数の構成

数の構成~自然数から複素数へ~

前回まで、一般的な集合や写像の性質について調べてきたのでした。

今回から、いよいよ身近な数である自然数、整数、有理数、実数、複素数を集合として構成し、適当な演算を入れることで私たちが普段使っている数の体系として完成させます。

今までに出て来た定理や概念がふんだんに使われていきますので、ぜひじっくりと味わってみて下さい。

ペアノシステム

Ex.SetTop.2.2.7.においては、空集合を 0 として、1 = \{0\},2=\{0,1\},\cdots,n=\{0,1,\dots,n-1\},\cdots などとして自然数を構成しました。

ですが、実はこれは自然数というものの構成方法の一つに過ぎません。一般には、次のペアノシステムという抽象的な条件によって自然数は特徴付けられます。自然数の普遍性とでも言うべき性質でしょうか。


◆Def.SetTop.4.1.1. (ペアノシステム)

(X,x,f) がペアノシステムであるとは、次を満たすことを言う。

1.X は集合、x \in Xf \colon X \rightarrow X は写像
2.x \notin f(X)
3.f は単射
4.A \subset X が以下を満たすならば、A = X
a. x \in A
b. a \in A \Rightarrow f(a) \in A すなわち f(A) \subset A



◇Rem.SetTop.4.1.2.

イメージとしては、ここで言う x とは最小の自然数 0 のことであり、f(x)=1,f(f(x))=2,f(f(f(x)))=3,\cdots のように、f とは次の数に移す写像であると考えることができます。

そして、4.の条件は、このイメージによれば次のように書き換えられます。

a. 0 \in A
b. a \in A \Rightarrow a+1 \in A
の2条件を満たすとき、A = \mathbb{N}

すなわち、4.とは数学的帰納法の原理に他なりません。逆に言えば、数学的帰納法が成り立つような集合として自然数の集合は定義されるということです。


次に、ペアノシステムの同型の概念を定めます。


◆Def.SetTop.4.1.3. (ペアノシステムの同型)

ペアノシステム (X,x,f)(X',x',f') が同型であるとは、全単射 \phi \colon X \rightarrow X' が存在して次を満たすことを言う。

1.\phi(x)=x'
2.\phi \circ f = f' \circ \phi

\xymatrix{ X \ar@{^{(}-_{>}}[r]^{f} \ar@{=}[d]_{\phi} & X \ar@{=}[d]^{\phi} \\ X' \ar@{^{(}-_{>}}[r]^{f'} & X' }



◇Rem.SetTop.4.1.4.

またイメージを持ち出すと、ペアノシステムが同型であるとは、X の自然数を nX' の自然数を n' で表すと、

1.00' に移す
2.nX の中で n+1 に移してから X'(n+1)' に移すのと、nX'n' に移してから X' の中で n'+1' に移すことが等しい

という意味になります。


ペアノシステムが実質的にただ一つしかないことを示します。そのために、帰納的集合という概念を定義します。


◆Def.SetTop.4.1.5. (帰納的集合)

任意の集合 x に対し、後者関数 SS(x) \overset{\mathrm{def}}{=}x \cup \{x\} で定める。

集合 X帰納的集合であるとは、

x \in X \Rightarrow S(x) \in X すなわち S(X) \subset X

を満たすことを言う。


次に特別な集合 N を定めます。


◆Def.SetTop.4.1.6.

集合 N を次のように定める。

0 \overset{\mathrm{def}}{=} \emptyset
0 を含むすべての帰納的集合を \mathcal{A} とする。

N  \overset{\mathrm{def}}{=} \bigcap_{ A \in \mathcal{A} } A

と定める。



◆Prop.SetTop.4.1.7.

N0 を含む最小の帰納的集合である。すなわち、N は帰納的集合であり、任意の 0 を含む帰納的集合 X に対して、N \subset X が成り立つ。


■Prf.

N0 を含むすべての帰納的集合の共通集合として定義したのであるから、N が帰納的集合であることを示せば、最小性は明らか。

S(N) \subset N を示す。

x \in N とすると、N の定義より、任意の A \in \mathcal{A} に対して x \in A

A は帰納的集合であるから、S(x) \in A である。A \in \mathcal{A} は任意であったから、

x \in \bigcap_{ A \in \mathcal{A} } A = N

したがって  S(N) \subset N が成り立つ。 □



◇Rem.SetTop.4.1.8.

N が帰納的集合であることがわかったので、後者関数 SN へ制限したとき、値域 S(N) \subset N なので、

S |_{N} \colon N \rightarrow N を定めます。

以降、N 以外の集合に S を使うことはないので、S とは S |_{N} の略であるとします。

ここで、S は単射であることに注意しておきましょう。
実際、x,y \in N に対し、S(x)=S(y) が成り立つならば、S の定義より

x \cup \{x\} = y \cup \{y\}

となりますが、

\{x\} \in  y \cup \{y\} より、x \in y または x=y が成り立ちます。また、\{y\}  \in x \cup \{x\} より、y \in x または x=y が成り立ちます。

ここで、x \neq y と仮定すると、x \in y かつ y \in x が成り立ちます。

かなり込みいった話になるのですが、x \in y かつ y \in x となるような集合は、通常採用されている集合の公理系(ZFC公理系)における正則性の公理によって、存在が許されないことがわかっています。なので矛盾であり、x=y となります。

ところで、正則性の公理を説明しましょう。正則性の公理とは、空でない集合は必ず自分自身と交わらない要素を持つということです。すなわち、X を集合とすれば、ある x \in X が存在して、任意の y \in X について y \notin x が成り立つことを言います。 この条件は \exists x \in X , x \cap X = \emptyset とも書けます。

正則性の公理を認めることにして、x \in y かつ y \in x となるような集合が存在しないことを示しましょう。

二点集合 \{x,y \} に正則性の公理を適用すると、x \cap \{x,y\} = \emptyset または y \cap \{x,y\} = \emptyset が成り立ちます。

x \cap \{x,y\} = \emptyset から x \notin x かつ y \notin x が言え、
y \cap \{x,y\} = \emptyset から x \notin y かつ y \notin y が言えます。

したがって、x \notin y または y \notin x が成り立ちます。

以上から、S(x)=S(y) が成り立つならば、x=y なので、S は単射となります。



◆Prop.SetTop.4.1.6. (ペアノシステムの存在と一意性)

ペアノシステムは同型を除いてただ一つ存在する。


■Prf.

Step1.(存在の証明)

(N,0,S) がペアノシステムであることを示す。Def.SetTop.4.1.1.の条件1.~4.を確かめる。

条件1.は明らか。

条件2.を示す。x \in N とすると、S(x)= x \cup \{x\} となるから、x \in S(x) したがって S(x) \neq 0 = \emptyset
よって、0S(x) の形で書き表すことはできないので、0 \notin S(N)

条件3.については、Rem.SetTop.4.1.8.で示した。

条件4.を示す。
A \subset N とする。条件4.の仮定を A について書き記すと、次のようになる。

a. 0 \in A
b. a \in A \Rightarrow S(a) \in A

これはすなわち、A0 を含む帰納的集合であることを示している。

Prop.SetTop.4.1.7.より、N0 を含む最小の帰納的集合であるから、N \subset A

したがって、A = N が成り立つ。

以上から、条件1.~4.をすべて満たすので、(N,0,S) はペアノシステムである。

Step2. (一意性の証明)

(X,x,f) を任意のペアノシステムとすると、(N,0,S) に同型であることを示す。

まず、写像 \phi \colon N \rightarrow X を構成したい。そのために、N \times X の部分集合 \Gamma_{\phi} であって、任意の n \in N に対し、ただ一つの x \in X が存在して (n,x) \in \Gamma_{\phi} となっているようなものを構成する。すると、写像 \phi=(N,X,\Gamma_{\phi}) として定義される。実はこれが全単射になっていることが言える。

\Gamma_{\phi} を次のように定義する。
N \times X の部分集合 B で、次の条件を満たすものを考える。

(0,x) \in B
(n,y) \in B \Rightarrow \ (S(n),f(y)) \in B

これらの条件を満たす B のすべてを \mathcal{B} とし、

 \Gamma_{\phi}  = \bigcap_{ B \in \mathcal{B} } B

と定める。すると、Prop.SetTop.4.1.7.の証明とまったく同様にして、 \Gamma_{\phi} \mathcal{B} に属する最小の集合であることがわかる。

 \Gamma_{\phi} が全単射 \phi のグラフとなることを示そう。すなわち、任意の n \in N に対しただ一つの y \in X が存在して (n,y) \in \Gamma_{\phi} となること( \Gamma_{\phi} が写像のグラフであること)と、任意の y \in X に対しただ一つの n \in N が存在して (n,y) \in \Gamma_{\phi} となること( \Gamma_{\phi} が写像のグラフであるならば、全単射のグラフとなること)を示す。

(N,0,S)(X,x,f) はともにペアノシステムであるから、片方を示せば NX の役割を入れ替えることでまったく同様にもう一方を示すことができる。ここでは、前者を示す。

N の部分集合 M

M = \{ n \in N \mid \exists! y \in X,(n,y) \in  \Gamma_{\phi} \} と定義すると、

M = N を示せばよい。そのために、Def.SetTop.4.1.1.の条件4.を満たすことを示そう。

まず、0 \in M を示す。

  \Gamma_{\phi} の定義より、(0,x) \in  \Gamma_{\phi} である。
(0,y) \in \Gamma_{\phi},x \neq y が存在したとして矛盾を導く。

集合  \Gamma_{\phi} \setminus \{(0,y)\} が \mathcal{B} に属することを示せば、 \Gamma_{\phi} の最小性に矛盾するので、これを示そう。

まず、(0,x) \in \Gamma_{\phi} \setminus \{(0,y)\} である。
次に、(n,z) \in \Gamma_{\phi} \setminus \{(0,y)\} だとすると、0 \notin S(N) に注意して (S(n),f(z)) \neq (0,y) であるから、 (S(n),f(z)) \in \Gamma_{\phi} \setminus \{(0,y)\} となる。したがって、 \Gamma_{\phi} \setminus \{(0,y)\} \in \mathcal{B}

これで 0 \in M が示された。

次に、n \in M \Rightarrow S(n) \in M を示す。

n \in M よりただ一つの y \in X が存在して (n,y) \in \Gamma_{\phi}
  \Gamma_{\phi} の定義より (S(n),f(y)) \in \Gamma_{\phi}

(S(n),z) \in \Gamma_{\phi},f(y) \neq z が存在したとして矛盾を導く。

やはり、集合  \Gamma_{\phi} \setminus \{(S(n),z)\} が \mathcal{B} に属することを示せば、 \Gamma_{\phi} の最小性に矛盾するので、これを示そう。

まず、0 \notin S(N) に注意して (0,x) \neq (S(n),z) であるから、(0,x) \in \Gamma_{\phi} \setminus \{(S(n),z)\} である。

(m,w) \in  \Gamma_{\phi} \setminus \{(S(n),z)\} として、(S(m),f(w)) \neq (S(n),z) を示す。

(S(m),f(w)) = (S(n),z) とすると、S の単射性より m=n となる。n \in M であるから、 (m,w)=(n,y) が成り立つ。したがって、  (S(m),f(w)) =( S(n),f(y)) = (S(n),z)

一方、仮定より  (S(n),f(y)) \neq (S(n),z) であるから矛盾。

したがって  (S(m),f(w)) \neq (S(n),z) であるから、  (S(m),f(w)) \in \Gamma_{\phi} \setminus \{(S(n),z)\}

よって、 \Gamma_{\phi} \setminus \{(S(n),z)\} \in \mathcal{B} である。

これで n \in M \Rightarrow S(n) \in M が示された。

よって、M はDef.SetTop.4.1.1.の条件4.を満たす集合であるから、M=N
これは、任意の n \in N に対しただ一つの y \in X が存在して (n,y) \in \Gamma_{\phi} となることを表している。

NX の役割を入れ替えて同様の議論をすれば、任意の y \in X に対しただ一つの n \in N が存在して (n,y) \in \Gamma_{\phi} となることもわかり、したがって  \Gamma_{\phi} は全単射 \phi \colon N \rightarrow X のグラフを定める。

最後に、全単射 \phi \colon N \rightarrow X がペアノシステムの同型を与えていることを、Def.SetTop.4.1.3.の条件1.と2.を確かめることで示す。

条件1.

\Gamma_{\phi} の定義より (0,x) \in \Gamma_{\phi} であるから、\phi(0)=x である。

条件2.

\phi \circ S = f \circ \phi を示す。
\Gamma_{\phi} の定義より   (n,y) \in \Gamma_{\phi} \Rightarrow \ (S(n),f(y)) \in \Gamma_{\phi} が成り立つ。
すなわち、\phi(n)=y \Rightarrow \phi(S(n))=f(y) が成り立つ。
そこで、任意の n \in N をとると、 \phi(S(n))=f(\phi(n)) となるから、(\phi \circ S)(n)=(f \circ \phi)(n)
よって \phi \circ S = f \circ \phi である。

以上から、\phi がペアノシステム (N,0,S)(X,x,f) の同型を与える。

命題の証明はこれで終わりであるが、後のために同型 \phi がただ一つしか存在しないことを示しておく。

\phi' がペアノシステムの同型であるとして、\phi'=\phi を示そう。

N の部分集合 P= \{ n \in N \mid  \phi'(n)=\phi(n) \} として、P がDef.SetTop.4.1.1.の条件4.を満たすことを示す。

まず、 \phi'(0)=x=\phi(0) である。

また、n \in P とすると、\phi'(n)=\phi(n) である。

\( \phi \circ S = f \circ \phi,\phi' \circ S = f \circ \phi' より、

 \phi'(S(n))=f(\phi'(n))=f(\phi(n))=\phi(S(n))

となるから、S(n) \in P

よって、P はDef.SetTop.4.1.1.の条件4.を満たすので、P=N

すなわち、任意の n \in N に対して   \phi'(n)=\phi(n) が成り立つから、 \phi'=\phi である。 □


これにより、私たちは自然数の定義をすることができるようになりました。


◆Def.SetTop.4.1.7. (自然数の定義)

ペアノシステムは同型を除いてただ一つ存在するので、適当なペアノシステム X,x,f をとり、X の元を自然数という。X は普通 \mathbb{N} と表す。



◇Rem.SetTop.4.1.8.

Ex.SetTop.2.2.7.とは、実は (N,0,S) そのものです。つまり、見た目上は数ある(しかしすべて同型である)ペアノシステムの一つの例だったというわけです。

具体的で取り回しがよいため、以降は、(N,0,S) を自然数の定義として話を進めていきましょう。


 

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