大学数学

写像.13 集合の準同型定理、引き起こされる写像

集合の準同型定理

Prop.SetTop.3.12.1.を応用すると、見かけ上異なる2つの集合が実質的に同じものである(同型である)ことが言えたりします。今回はそのための方法である集合の準同型定理について述べていきます。

まず、写像 f付随する同値関係という概念を定義します。


◆Def.SetTop.3.13.1.

f \colon X \rightarrow Y を写像とする。集合 X 上の同値関係 \sim_{f}

x \sim_{f} y \overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow} f(x)=f(y)

によって定義する。


これが実際に同値関係であることを示しておきましょう。

・反射律

\forall x \in X とすると、f(x)=f(x) ですから、x \sim_{f} x です。

・推移律

\forall x,y,z \in X とします。 x \sim_{f} y かつ   y \sim_{f} z のとき、x \sim_{f} z を示します。
 x \sim_{f} y かつ   y \sim_{f} z より、f(x)=f(y) かつ f(y)=f(z) なので f(x)=f(z) です。よって x \sim_{f} z となります。

・対称律

 \forall x,y \in X とします。 x \sim_{f} y ならば y \sim_{f} x を示します。
 x \sim_{f} y より f(x)=f(y) であり、f(y)=f(x) ですから  y \sim_{f} x です。

以上より、反射律、推移律、対称律を満たすので、\sim_{f} は同値関係になります。

x \sim_{f} y \overset{\mathrm{def}}{\Leftrightarrow} f(x)=f(y)\sim_{f} の定義ですから、X 上の同値関係として \sim_{f} を考えたとき、Prop.SetTop.3.12.1.の仮定は明らかに満たしています。

したがって、次が成り立ちます。


◆Thm.SetTop.3.13.2. (集合の準同型定理)

X を集合、f \colon X \rightarrow Y を写像、\sim_{f}f に付随する同値関係とする。また、\pi_{f} \colon X \rightarrow X/{\sim_{f}} を商写像とする。

このとき、写像  \tilde{f} \colon  X/{\sim_{f}} \rightarrow Y で、f= \tilde{f} \circ  \pi_{f} を満たすものがただ一つ存在する。

さらに   \tilde{f} は単射であり、したがって同型(全単射)  \tilde{f} \colon X/{\sim_{f}} \xrightarrow{\sim} f(X) を引き起こす。

図式で表すと次のようになる。ここで、i \colon f(X) \rightarrow Y は包含写像である。

\xymatrix{ X \ar[r]^{f}  \ar[d]_{\pi_{f}} & Y  \\  X/{\sim_{f}} \ar[r]^{\sim}_{\exists! \tilde{f}} & f(X) \ar[u]_{i} }


■Prf.

 \tilde{f} がただ一つ存在して単射であることはProp.SetTop.3.12.1.よりわかるので、同型  \tilde{f} \colon X/{\sim_{f}} \xrightarrow{\sim} f(X) を引き起こすことを示せばよい。

全射性、すなわち  \tilde{f}( X/{\sim_{f}})=f(X) であることを示せばよい。

f= \tilde{f} \circ  \pi_{f} より、任意の [x]_{f} \in  X/{\sim_{f}} について、 \tilde{f}([x]_{f})=f(x) \in f(X) であるから、 \tilde{f}( X/{\sim_{f}}) \subset f(X)

逆に、任意の y \in f(X) はある x \in X によって y=f(x) とかけて、\tilde{f}([x]_{f})=f(x) であるから、 \tilde{f}( X/{\sim_{f}}) \supset f(X)

よって、  \tilde{f}( X/{\sim_{f}})=f(X) である。 □



◆Rem.SetTop.3.13.3.

Y への同型ではないものの、Y の部分集合 f(X) への同型を引き起こすことから、「準」同型定理と言われます。

準同型定理を使うと、よくわかっていない集合 Z がよくわかっている集合の写像 f \colon X \rightarrow Y によって Z = X/{\sim_{f}} とかけたとき、Zf(X) を同型によって同一視できることがわかります。


引き起こされる写像

Cor.SetTop.3.12.2.や集合の準同型定理を使うと、より一般の写像 f \colon X \rightarrow Z が写像 g \colon X \rightarrow Y と写像 h \colon Y \rightarrow Z に分解されるための必要十分条件を考えることができます。これを f によって引き起こされる写像と言います。


◆Thm.SetTop.3.13.4. (引き起こされる写像)

X,Y,Z を空でない集合、 f \colon X \rightarrow Z, g \colon X \rightarrow Y を写像とする。
g(x)=g(y) ならば f(x)=f(y) が成り立つとき、またそのときに限り、写像 h \colon Y \rightarrow Zf = h \circ g を満たすものが存在する。

\xymatrix{ X  \ar[d]_{g} \ar[dr]^{f} \\ Y  \ar[r]_{\exists h} & Z  }

さらに次の条件を満たすとき、以下が成り立つ。

A.g が全射ならば、h はただ一つ存在する。

B.A.に加えて、さらに f(x)=f(y) ならば g(x)=g(y) が成り立つ(したがって g(x)=g(y)f(x)=f(y) が同値である)とき、h は単射であり、同型 Y=g(X) \overset{h}{\simeq} f(X) を引き起こす。


■Prf.

\sim_{f},\sim_{g} をそれぞれ f,g に付随する同値関係とする。仮定より g(x)=g(y) ならば f(x)=f(y) であるから、x \sim_{g} y ならば x \sim_{f} y である。

したがって、Cor.SetTop.3.12.2.より、次の図式は可換となる。

\xymatrix{ X \ar[r]^{\mathrm{id}_{X}}_{\sim}  \ar[d]_{\pi_{g}} & X \ar[d]^{\pi_{f}} \\  X/{\sim_{g}} \ar[r]^{\exists! \widetilde{\mathrm{id}_{X}}} & X/{\sim_{f}} }

ここで、 \mathrm{id}_{X} は恒等写像なので全単射より特に全射であること、 \pi_{f},\pi_{g} は全射であること、 \widetilde{\mathrm{id}_{X}} \circ  \pi_{g} = \pi_{f} \circ \mathrm{id}_{X} からProp.SetTop.3.7.2.より  \widetilde{\mathrm{id}_{X}} は全射であることに注意しておく。

さらに準同型定理を用いると、次が可換となる。ここに、i_{Y} \colon g(X) \rightarrow Yi_{Z} \colon f(X) \rightarrow Z は包含写像である。

\xymatrix{ X \ar[r]^{\mathrm{id}_{X}}_{\sim}  \ar[d]_{\pi_{g}} \ar@/_2.5pc/[ddd]_{g} & X \ar[d]^{\pi_{f}} \ar@/^2.5pc/[ddd]^{f} \\ X/{\sim_{g}} \ar[r]^{\exists! \widetilde{\mathrm{id}_{X}}} \ar[d]_{\exists! \tilde{g}}^{\sim} & X/{\sim_{f}} \ar[d]^{\exists! \tilde{f}}_{\sim} \\ g(X) \ar[d]_{ i_{Y}} & f(X) \ar[d]^{ i_{Z}}  \\ Y & Z}

ここで、 \tilde{g} は同型(全単射)であるから、逆写像  \widetilde{g^{-1}} が存在する。

よって、写像 \tilde{f} \circ \widetilde{id_{X}} \circ \widetilde{g^{-1}} \colon g(X) \rightarrow f(X) を定めることができて、次が可換となる。

\xymatrix{ X \ar[r]^{\mathrm{id}_{X}}_{\sim}  \ar[d]_{\pi_{g}} \ar@/_2.5pc/[ddd]_{g}  & X \ar[d]^{\pi_{f}} \ar@/^2.5pc/[ddd]^{f}  \\ X/{\sim_{g}} \ar[r]^{\exists! \widetilde{\mathrm{id}_{X}}} \ar[d]_{\exists! \tilde{g}}^{\sim} & X/{\sim_{f}} \ar[d]^{\exists! \tilde{f}}_{\sim} \\ g(X) \ar[r]^{\tilde{f} \circ \widetilde{\mathrm{id}_{X}} \circ \widetilde{g^{-1}}} \ar[d]_{ i_{Y}} & f(X) \ar[d]^{ i_{Z}}  \\ Y & Z}

ここで、h \colon Y \rightarrow Z を次のように定める。ただし、c \in Z は適当な一点とする。

h(y) = \begin{cases} (i_{Z} \circ \tilde{f} \circ \widetilde{id_{X}} \circ \widetilde{g^{-1}})(y) & ( y \in g(X) ) \\ c & ( y \notin g(X) ) \end{cases}

すると、図式の可換性より、任意の x \in X に対して、

    \begin{align*} (h \circ g)(x) &=  h(g(x)) \\ &= (i_{Z} \circ \tilde{f} \circ \widetilde{\mathrm{id}_{X}} \circ \widetilde{g^{-1}})(g(x)) \\ &= (i_{Z} \circ \tilde{f} \circ \widetilde{\mathrm{id}_{X}})(\widetilde{g^{-1}}(g(x))) \\ &= (i_{Z} \circ \tilde{f} \circ \widetilde{\mathrm{id}_{X}})([x]_{g}) \\ &= (i_{Z} \circ \tilde{f} \circ \widetilde{\mathrm{id}_{X}})(\pi_{g}(x)) \\ &= ((i_{Z} \circ \tilde{f}) \circ (\widetilde{\mathrm{id}_{X}} \circ \pi_{g}))(x) \\ &= ((i_{Z} \circ \tilde{f}) \circ ( \pi_{f} \circ \mathrm{id}_{X}))(x) \\ &= (i_{Z} \circ \tilde{f})([x]_{f}) \\ &= i_{Z}(f(x)) \\ &= f(x) \end{align*}

となるから、f = h \circ g が成り立つ。

\xymatrix{ X \ar[r]^{\mathrm{id}_{X}}  \ar[d]_{\pi_{g}} \ar@/_2.5pc/[ddd]_{g}  & X \ar[d]^{\pi_{f}} \ar@/^2.5pc/[ddd]^{f}  \\ X/{\sim_{g}} \ar[r]^{\exists! \widetilde{\mathrm{id}_{X}}} \ar[d]_{\exists! \tilde{g}}^{\sim} & X/{\sim_{f}} \ar[d]^{\exists! \tilde{f}}_{\sim} \\ g(X) \ar[r]^{\tilde{f} \circ \widetilde{\mathrm{id}_{X}} \circ \widetilde{g^{-1}}} \ar[d]_{ i_{Y}} & f(X) \ar[d]^{ i_{Z}}  \\ Y \ar[r]^{\exists h} & Z}

逆に、f = h \circ g を満たす h \colon Y \rightarrow Z が存在するとき、g(x)=g(y) ならば f(x)=f(y) が成り立つことを示す。

g(x)=g(y) より、f(x)=h(g(x))=h(g(y))=f(y) であるから、示された。

次に、A.を示す。

g が全射のとき、f = h' \circ g を満たす h' \colon Y \rightarrow Z が存在すれば、h'=h となることを示そう。

任意の y \in Y をとる。g は全射であるから、ある x \in X が存在して、y=g(x) とかける。
h'(y)=h'(g(x))=f(x)=h(g(x))=h(y) となるので、h'=h である。

最後に、B.を示す。

f(x)=f(y) ならば g(x)=g(y) が成り立つとき、Prop.SetTop.3.7.2.より  \widetilde{\mathrm{id}_{X}} が単射となることに注意しておく。既に   \widetilde{\mathrm{id}_{X}} が全射であることを示しているので、  \widetilde{\mathrm{id}_{X}} は全単射となる。

仮定よりA.が成り立っているので、ただ一つの h とは上で構成した h = i_{Z} \circ \tilde{f} \circ \widetilde{id_{X}} \circ \widetilde{g^{-1}} に他ならない。( g は全射だから、Y=g(X) に注意)

ここで、 i_{Z} は単射であり、\tilde{f},\widetilde{\mathrm{id}_{X}},\widetilde{g^{-1}} はすべて全単射であるから、h も単射となる。

さらに、h(Y)= h(g(X))=f(X) であるから、h は同型 Y=g(X) \overset{h}{\simeq} f(X) を引き起こす。 □


以上で写像のセクションを終わります

以上で写像のセクションを終わります。純粋な集合の話は以上で終わりです。お疲れ様でした。ここまでの内容を理解しておけば、とりあえず純粋な集合の内容で困ることは少ないと思います。

次は実数や実数空間について詳しく取り扱っていきたいと思います。

普段何気なく使っている実数ですが、そもそも実数とはどういったものでしょうか。そして実数空間はどのような性質を持っているのでしょうか。そもそも「空間」って何でしょうか。

徐々に集合と位相の双璧をなす位相という概念に迫っていきます。

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