大学数学

写像.11 直和の普遍性

直和の普遍性

直和とは何かを集合と元を用いて具体的に記述することなく、他の数学的対象から見てどのような役割を果たしているかという情報だけで実質的に定めてしまいます。これを直和の普遍性といい、普遍性を用いて直和を定義することができます。


◆Prop.SetTop.3.11.1. (直和の普遍性)

(X_i)_{i \in I} を集合族、Y を任意の集合とし、任意の写像の族 (f_i \colon X_i \rightarrow Y)_{i \in I} が与えられているとする。
このとき、次の性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組は同型(全単射によって同一視できるもの)を除いてただ一つ存在する。

性質A.写像 f \colon X \rightarrow Y で、任意の i \in I に対して f_i =  f \circ \pi_{i} を満たすものがただ一つ存在する。

すなわち、任意の i \in I に対して、次の図式を可換にする f がただ一つ存在する。

\xymatrix{ & X  \ar[dl]_{\exists! f} \\ Y  & X_i \ar[l]^{f_i} \ar[u]_{\pi_{i}} }



◆Def.SetTop.3.11.2. (積集合の普遍性による定義)

性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組は同型を除いてただ一つ存在するので、この X を (X_i)_{i \in I} の直和という。



Rem.1.

積集合のときと同様に、証明は次の2ステップを踏みます。

Step1.性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組が存在するとしたら、同型を除いてただ一つしか存在しないこと。
Step2.性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組が少なくとも一つ存在すること。

このうち、Step1.については、普遍性として定式化されているため、極めて標準的なやり方で示すことができます。Step1.については、積集合のときと同じようなやり方で示せることに注目して下さい。

Step2.においては、やはり具体的に構成するのが確実です。ここでは以前定義した「直和」 \amalg_{i \in I} X_i と(標準的)入射 \iota_{i} \colon X_i \rightarrow \amalg_{i \in I} X_i,\iota_{i}(x_i)=(x_i,i) がまさに性質A.を満たすものであることを示し、証明を終えます。



■Prop.SetTop.3.10.1.のPrf.

Step1.

性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組が存在するとしたら、同型を除いてただ一つしか存在しないことを示す。

性質A.を満たす別の集合 X' と写像の族 (\pi'_{i} \colon X_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組が存在するとしよう。

すると、集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組が性質A.を満たすことから、Y = X',f_i= \pi'_{i} として、

写像 f \colon X \rightarrow X' で、任意の i \in I に対して \pi'_{i} = f \circ \pi_{i} を満たすものがただ一つ存在する。

今度は、集合 X' と写像の族 (\pi'_{i} \colon X_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組が性質A.を満たすことから、Y = X,f_i= \pi_{i} として、

写像 g \colon X' \rightarrow X で、任意の i \in I に対して \pi_{i} = g \circ \pi'_{i} を満たすものがただ一つ存在する。

fg が互いに逆写像になっていること、したがって fX から X' への同型を与えることを示せばよい。

\pi'_{i} = f \circ \pi_{i} と \pi_{i} = g \circ \pi'_{i} より、

 \pi_{i} = g \circ f \circ \pi_{i}
 \pi'_{i} = f \circ g \circ \pi'_{i}

となる。一方で、

 \pi_{i} = \mathrm{id}_{X} \circ \pi_{i}
 \pi'_{i} = \mathrm{id}_{X'} \circ \pi'_{i}

である。

ここで、集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組が性質A.を満たすことから、Y = X,f_i= \pi_{i} として、

写像 p \colon X \rightarrow X で、任意の i \in I に対して \pi_{i} = p \circ \pi_{i} を満たすものがただ一つ存在する。

ここで、g \circ f \mathrm{id}_{X} はともに上の p の条件を満たしているから、p の一意性より、  g \circ f = \mathrm{id}_{X} が成り立つ。

また、集合 X' と写像の族 (\pi'_{i} \colon X'_i \rightarrow X)_{ i \in I} の組が性質A.を満たすことから、Y = X',f_i= \pi'_{i} として、

写像 q \colon X' \rightarrow X' で、任意の i \in I に対して \pi'_{i} = q \circ \pi'_{i} を満たすものがただ一つ存在する。

ここで、f \circ g \mathrm{id}_{X'} はともに上の q の条件を満たしているから、q の一意性より、f \circ g = \mathrm{id}_{X'} が成り立つ。

したがって、  g \circ f = \mathrm{id}_{X} かつ f \circ g = \mathrm{id}_{X'} であるから、f は同型射である。

Step2.

\amalg_{i \in I} X_i と(標準的)入射  \iota_{i} \colon X_i \rightarrow \amalg_{i \in I} X_i,\iota_{i}(x_i)=(x_i,i) が性質A.を満たすことを示す。

写像 f \colon \amalg_{i \in I} X_i \rightarrow Yf((x_i,i))= f_{i}(x_i),x_i \in X_i で定める。すると、任意の i \in I と任意の x_i \in X_i について、

(f \circ \iota_{i} )(x_i)=f((x_i,i))=f_{i}(x_i)

だから、f_{i} = f \circ  \iota_{i} である。

このような f がただ一つしか存在しないことを示そう。

写像 g \colon \amalg_{i \in I} X_i \rightarrow Y を任意の i \in I に対して f_i = g \circ \iota_{i} を満たすものであるとする。

このとき、任意の i \in I と任意の x_i \in X_i について、

(g \circ \iota_{i})(x_i)= g((x_i,i))=f_{i}(x_i)

だから、  g((x_i,i))=f_{i}(x_i)=f((x_i,i)) となるので、g=f

以上から、示された。 □



Rem.2.

直和というのは、各 X_i を番号 i で「ずらして」共通部分を持たない「和集合」として表したものです。

性質A.というのは、写像の族 (f_i \colon X_i \rightarrow Y)_{i \in I}、つまり各 X_i から他の集合 Y を写像を通じて見るということと、直和というすべての X_i の共通部分を持たない「和集合」を考え、直和から Y を見るということが、どちらもすべての X_i から見ているに等しいと言っているのです。

そして、性質A.を持っている集合が何であるかを具体的に定めなくても、性質A.を持っているというだけで、それが(もしたとえ見かけが異なっていたとしても)実質的に直和でしかないということがわかってしまうのです。



Rem.3.

図式で見るとよくわかりますが、実は直和の普遍性というのは、積集合の普遍性とよく似ています。具体的には、対象である X,X_i,Y を変えずに、射の向きだけをすべて逆にして得ることができます。これを積集合と直和の双対性と言います。双対的である二つの対象は、射だけをすべて逆向きにして得られるので、元の対象が射に関するある性質を持つことを示せば、自動的に双対である対象も射を逆向きにした性質を満たします。


 

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