大学数学

写像.10 積集合の普遍性

積集合の普遍性

積集合とは何かを集合と元を用いて具体的に記述することなく、他の数学的対象から見てどのような役割を果たしているかという情報だけで実質的に定めてしまいます。これを積集合の普遍性といい、普遍性を用いて積集合を定義することができます。


◆Prop.SetTop.3.10.1. (積集合の普遍性)

(X_i)_{i \in I} を集合族、Y を任意の集合とし、任意の写像の族 (f_i \colon Y \rightarrow X_i)_{i \in I} が与えられているとする。
このとき、次の性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組は同型(全単射によって同一視できるもの)を除いてただ一つ存在する。

性質A.写像 f \colon Y \rightarrow X で、任意の i \in I に対して f_i = \pi_{i} \circ f を満たすものがただ一つ存在する。

すなわち、任意の i \in I に対して、次の図式を可換にする f がただ一つ存在する。

\xymatrix{ & X \ar[d]^{\pi_{i}} \\ Y \ar[ur]^{\exists! f}  \ar[r]_{f_i} & X_i }



◆Def.SetTop.3.10.2. (積集合の普遍性による定義)

性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組は同型を除いてただ一つ存在するので、この X を (X_i)_{i \in I} の積集合という。



Rem.1.

証明の前にポイントを明確にしておきましょう。普遍性として定式化された命題の証明においては、普通は次の2ステップを踏みます。

Step1.性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組が存在するとしたら、同型を除いてただ一つしか存在しないこと。
Step2.性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組が少なくとも一つ存在すること。

Step1.を一意性の証明、Step2.を存在の証明と言ったりします。Step1.とStep2.が合わさることで、同型を除いてただ一つ存在することが言えます。

このうち、Step1.については、普遍性として定式化されているため、極めて標準的なやり方で示すことができます。この先も普遍性として定式化された命題をいくつか示しますが、Step1.についてはすべて同じようなやり方で示せることに注目して下さい。
なので、慣れてくるとStep1.はしばしば省略されます。

したがって、一般的に難しいのはStep2.ということになります。実際に存在することを示すには、具体的に構成するのが確実です。ここでは以前定義した「積集合」 \prod_{i \in I} X_i と(標準的)射影 pr_i \colon \prod_{i \in I} X_i \rightarrow X_i,pr_i((x_i)_{i \in I})=x_i がまさに性質A.を満たすものであることを示し、証明を終えます。



■Prop.SetTop.3.10.1.のPrf.

Step1.

性質A.を満たす集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組が存在するとしたら、同型を除いてただ一つしか存在しないことを示す。

性質A.を満たす別の集合 X' と写像の族 (\pi'_{i} \colon X \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組が存在するとしよう。

すると、集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組が性質A.を満たすことから、Y = X',f_i= \pi'_{i} として、

写像 f \colon X' \rightarrow X で、任意の i \in I に対して \pi'_{i} = \pi_{i} \circ f を満たすものがただ一つ存在する。

今度は、集合 X' と写像の族 (\pi'_{i} \colon X \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組が性質A.を満たすことから、Y = X,f_i= \pi_{i} として、

写像 g \colon X \rightarrow X' で、任意の i \in I に対して \pi_{i} = \pi'_{i} \circ g を満たすものがただ一つ存在する。

fg が互いに逆写像になっていること、したがって fX' から X への同型を与えることを示せばよい。

\pi'_{i} = \pi_{i} \circ f と \pi_{i} = \pi'_{i} \circ g より、

 \pi_{i} = \pi_{i} \circ f \circ g
 \pi'_{i} = \pi'_{i} \circ g \circ f

となる。一方で、

 \pi_{i} = \pi_{i} \circ \mathrm{id}_{X}
 \pi'_{i} = \pi'_{i} \circ \mathrm{id}_{X'}

である。

ここで、集合 X と写像の族 (\pi_{i} \colon X \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組が性質A.を満たすことから、Y = X,f_i= \pi_{i} として、

写像 p \colon X \rightarrow X で、任意の i \in I に対して \pi_{i} = \pi_{i} \circ p を満たすものがただ一つ存在する。

ここで、f \circ g \mathrm{id}_{X} はともに上の p の条件を満たしているから、p の一意性より、  f \circ g = \mathrm{id}_{X} が成り立つ。

また、集合 X' と写像の族 (\pi'_{i} \colon X' \rightarrow X_i)_{ i \in I} の組が性質A.を満たすことから、Y = X',f_i= \pi'_{i} として、

写像 q \colon X' \rightarrow X' で、任意の i \in I に対して \pi'_{i} = \pi'_{i} \circ q を満たすものがただ一つ存在する。

ここで、 g \circ f \mathrm{id}_{X'} はともに上の q の条件を満たしているから、q の一意性より、 g \circ f = \mathrm{id}_{X'} が成り立つ。

したがって、  f \circ g = \mathrm{id}_{X} かつ  g \circ f = \mathrm{id}_{X'} であるから、f は同型射である。

Step2.

\prod_{i \in I} X_i と(標準的)射影 pr_i \colon \prod_{i \in I} X_i \rightarrow X_i,pr_i((x_i)_{i \in I})=x_i が性質A.を満たすことを示す。

写像 f \colon Y \rightarrow \prod_{i \in I} X_if(y)= ( f_{i}(y))_{i \in I},y \in Y で定める。すると、任意の i \in I と任意の y \in Y について、

(pr_{i} \circ f )(y)=pr_{i}( ( f_{i}(y))_{i \in I})=f_{i}(y)

だから、f_{i} = pr_{i} \circ f である。

このような f がただ一つしか存在しないことを示そう。

写像 g \colon Y \rightarrow \prod_{i \in I} X_i を任意の i \in I に対して f_i = pr_{i} \circ g を満たすものであるとする。

このとき、任意の i \in I と任意の y \in Y について、

(pr_{i} \circ g)(y)= pr_{i}(g(y))=f_{i}(y)

だから、  g(y)=( f_{i}(y))_{i \in I}=f(y) となるので、g=f

以上から、示された。 □



Rem.2.

積集合というのは、各 X_i から一つずつ元を選び出すことでできる写像の集まりであると言いました。つまりは、すべての X_i を束ねたものであり、すべての X_i についての情報を持っていると考えられます。

性質A.というのは、写像の族 (f_i \colon Y \rightarrow X_i)_{i \in I}、つまり他の集合 Y からすべての X_i を写像を通じて見るということと、積集合にすべての f_i の情報を束ねてしまって、積集合を通じて見るということが、どちらもすべての X_i を見ているに等しいと言っているのです。

そして、性質A.を持っている集合が何であるかを具体的に定めなくても、性質A.を持っているというだけで、それが(もしたとえ見かけが異なっていたとしても)実質的に積集合でしかないということがわかってしまうのです。


 

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