大学数学

写像.7 全射の性質

全射の性質

全射であることを同値な条件で言い替えることで特徴付けます。


◆Prop.SetTop.3.7.1.

f \colon X \rightarrow Y を写像とする。次は同値。

1.f は全射
2.f(X)=Y
3.任意の B \subset Y に対して f(f^{-1}(B))=B
4.写像 g \colon Y \rightarrow Xf \circ g = \mathrm{id}_{Y} を満たすもの
が存在する。
5.任意の g_1,g_2 \colon Y \rightarrow Z に対して、g_1 \circ f =  g_2 \circ f \Rightarrow g_1=g_2


■Prf.

1.\Leftrightarrow 2.

全射の定義とは、任意の y \in Y に対してある x \in X が存在して y=f(x) とかけることである。
一方、f(X) とはある x \in X ) が存在して \( y=f(x) とかける元の集合である。f(X)=Y ということは、任意の y \in Y に対してある x \in X が存在して y=f(x) とかけるということである。
したがって、1.と2.は同値である。

1.\Leftrightarrow 3.

\Rightarrow を示す。
一般に   f(f^{-1}(B)) \subset B であるから、  f(f^{-1}(B)) \supset B を示せばよい。B が空集合のときは明らか。
B が空集合でないとき、y \in B をとると、f は全射であるから、ある x \in X が存在して y=f(x) \in B とかける。ここで、x \in f^{-1}(B) となるので、y=f(x) \in  f(f^{-1}(B)) であるから、示された。

\Leftarrow を示す。
1.と2.が同値であることは既に示したので、2.を示せばよい。一般に f^{-1}(Y)=X であることに注意すると、
f(f^{-1}(Y))=f(X)=Y である。

1.\Leftrightarrow 4.

\Rightarrow を示す。
Y が空集合のときは、X が空集合のときでなければそもそも写像が存在せず、X が空集合のときは、空集合から空集合への(唯一存在する)空写像は全単射であるから、空写像自身が4.の条件を満たす g である。
以下、Y は空集合でないとする。
f は全射であるから、任意の y \in Y に対してそれぞれ( y に依存する)x_{y} \in f^{-1}(y) をとることができる。
g \colon Y \rightarrow Xg(y)=x_{y} で定めると、x_{y} の定義より、

(f \circ g)(y)=f(g(y))=f(x_{y})=y

であるから、f \circ g = \mathrm{id}_{Y} が成り立つ g が存在する。

\Leftarrow を示す。
Y が空集合のときは、4.の条件からやはり X は空集合となるしかなく、f は空写像であって全単射となる。
Y は空集合でないとする。
任意の y \in Y をとると、f(g(y))=y,g(y) \in X であるから、f は全射である。

4.\Leftrightarrow 5.

\Rightarrow を示す。
  g_1 \circ f =  g_2 \circ f に対して、f \circ h = \mathrm{id}_{Y} を満たす h を右から合成することで、

g_1 = g_1 \circ \mathrm{id}_{Y} = g_1 \circ f \circ h = g_2 \circ f \circ h = g_2 \circ \mathrm{id}_{Y} = g_2

\Leftarrow を示す。
X が空集合なら、X から Y への写像は Y への空写像 \phi しかない。Y が空集合でないとして矛盾を導く。
Z=\{1,2\} とし、g_1 \colon Y \rightarrow Z,g_{1}(y)=1,y \in Y とし、g_{2} \colon Y \rightarrow Z,g_{2}(y)=2,y \in Y とすると、g_1 \circ \phi, g_2 \circ \phi はともに Z への空写像であるから5.より g_1=g_2 とならねばならないが、明らかに g_1 \neq g_2 なので矛盾。したがって Y は空集合であり、空集合から空集合への空写像は全単射だから、特に全射である。

X は空集合でないとする。
このとき、f(X) は空集合でない。任意の y \in f(X) に対して、それぞれ( y に依存する)x_{y} \in f^{-1}(y) をとることができる。
また、X は空集合でないので、適当な一点 c \in X をとることができる。
写像 g \colon Y \rightarrow X を次のように定める。

g(y) = \begin{cases} x_y & (y \in f(X)) \\ c & ( y \notin f(X) ) \end{cases}

すると、任意の x  \in X に対して、

(f \circ g \circ f)(x) =f(g(f(x)))=f(x_{f(x)})= f(x)
(\mathrm{id}_{Y} \circ f)(x)=f(x)

であるから、 f \circ g \circ f = \mathrm{id}_{Y} \circ f

したがって5.より、 f \circ g =  \mathrm{id}_{Y} □



Rem.1.

Prop.SetTop.3.7.1.の4.を満たす gfセクションと言います。この言葉を使うと、f が全射であるということは、f のセクションが存在するということです。



Rem.2.

Prop.SetTop.3.7.1.の5.の性質を右簡約性といい、f が全射ならあたかも両辺を文字で割るかのように右についている f を消すことができます。左からは消せないことに注意して下さい。
また、右簡約性は他の任意の写像から見て全射がどのような性質を持っているかということを、元を一切使わずに記述しています。5.を全射の普遍性といい、圏論的な定式化では5.を全射の定義とします。


続いて、同値ではない性質について述べます。


◆Prop.SetTop.3.7.2.

f \colon X \rightarrow Y, g \colon Y \rightarrow Z を写像とする。
1.\Rightarrow 2.\Rightarrow 3.が成り立つ。

1.f,g は全射
2.g \circ f は全射
3.g は全射。さらに g が単射なら、f は全射


■Prf.

1.\Rightarrow 2.

Prop.SetTop.3.7.1.の2.を用いて、
(g \circ f)(X)=g(Y)=Z
より、g \circ f は全射である。

2.\Rightarrow 3.

2.より g(f(X))=Z なので、Z=g(f(x)) \subset g(Y) \subset Z より g(Y)=Z だから、g は全射である。

さらに g が単射なら、g は全単射であるから、g の逆写像 g^{-1} が存在する。g^{-1} は全単射だから特に全射であり、   g \circ f は仮定より全射だから、既に示した 1.\Rightarrow 2.を用いて、 g^{-1} \circ g \circ f = f は全射。 □


 

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