全射、単射、全単射
既に集合の濃度のところで一度やりましたが、全射、単射、全単射についてそのまま載せておきましょう。後ほどこれらの性質についてさらに踏み込んでいきます。
◆Def.SetTop.3.2.1.
を写像とする。
のとき、
は全射
のとき、
は単射
が全射かつ単射であるとき、全単射であるという。
が全射であるというのは、全がすべてを意味するように、すべての
は少なくとも一つの
から写像によって移ってきたものであるということです。(二つ以上から移って来る場合もあります)
が単射であるというのは、定義の対偶を取ってみればわかるのですが、
すなわち、異なるものは必ず違うところへ行くということなので、同じ行き先 に送られる
は高々一つしか存在しないということです。(一つも存在しない場合もあります)この高々一つという意味合いを単という字で表しています。
が全単射であるというのは、全射と単射を合わせて考えると、すべての
は少なくとも一つの
から移ってきて、かつそのような
は高々一つしか存在しないということなので、ただ一つ存在するということになります。
よって、次が成り立ちます。
◆Prop.SetTop.3.2.2.
は全単射である
が全単射のとき、一つの
に対してちょうど一つの
が対応することになるので一対一対応であるとも言います。
例については、集合の濃度の記事を参照下さい。
像、逆像
写像 があるとき、
の部分集合
が
によって
のどこに移るのか、もしくは
の部分集合
に移ってくるような
の元は何かということを考えるのは自然な発想です。
前者を像という概念として、後者を逆像という概念として定義します。
◆Def.SetTop.3.2.3.
を写像とし、
とする。
を の
による像という。
を の
による逆像(あるいは引き戻し)という。
Rem.1. 定義から は移る先なので
の部分集合であり、
は引き戻される先なので
の部分集合です。
Rem.2. や
が一点
や
のときは、
や
は
や
と書かれることが多いです。特に写像の定義から一つの元の行き先は必ず一つなので、
の部分集合
は値としての
としばしば同一視されます。一方で、
は必ずしも一点とは限りません。無数の元からなる集合であったり、逆に空集合であることもあります。
◇Ex.SetTop.3.2.4.
とし、
を
で定めます。すると、
となります。
ちなみに、 です。こちらについては任意の写像でこうなります。
制限、拡張
写像 があるとき、
の部分集合
の範囲に制限して考えたいことや、逆に
を含むより大きな集合
に拡張して考えたいことがあります。
そこで、写像の制限や拡張の概念を定義しておきましょう。
◆Def.SetTop.3.2.5.
を写像とし、
とする。
写像 を
で定め、
の
への制限という。
写像 について、
であるとき、
は
の
への拡張であるという。
◇Ex.SetTop.3.2.6.
における絶対値関数
を
に対して
で定めます。
一方で、 における絶対値関数
を
に対して
で定めます。
ここで、 なので、
における絶対値関数の値域を
ではなく
としても問題ないので、そのように解釈します。
すると、 は
の
への制限になっており、逆に
は
の
への拡張になっています。
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