大学数学

写像.1 写像の定義

今回から写像についてやっていきます

写像は関数を一般化した概念であり、対応というものを一般的に記述する道具です。集合と並んで空気や水のようにありとあらゆるところで使われています。

写像を取り扱うセクションでは、写像に関する種々の概念や例とともに、多少圏論的な考え方に踏み込んでみます。特に大切なのは普遍性という概念です。

ある数学的対象を集合の形で表したとき、集合自体の性質を直接調べることはいわば自分自身を自分で調べるようなものです。

この数学的対象を調べるのに別のやり方があります。それは他の数学的対象からどのように見えるか、他の数学的対象に対してどのような役割を果たしているかということです。他の数学的対象との関係性は写像で表現することができます。

数学的対象は、それ自身を調べることだけではなく、他の数学的対象からの写像を調べることでよりよく理解できる場合があります。

これはあたかも、人間が自分自身で考える自分と他人から見えている自分の両側面から考えたときによりよく理解できることと似ています。

そして極めつけとしては、他の数学的対象に対してどのような役割を果たしているかという情報だけで実質的に対象がただ一つに定まってしまう場合が存在します。この状況を指して普遍的であると言います。

写像のセクションでは、集合のセクションで定義した種々の集合に対して、普遍性という観点から改めて見直すということもやっていきます。

写像の定義

集合のところで多少触れましたが、改めて写像の定義をより厳密に述べましょう。

集合 X から集合 Y への写像 f とは、各 x \in X に対してそれぞれただ1つの y \in Y を対応させる規則だと言いました。

写像があるとき、写像のグラフというものを考えることができます。


◆Def.SetTop.3.1.1.

f \colon X \rightarrow Y を写像とするとき、

G_f \overset{\mathrm{def}}{=} \{ (x,y) \in X \times Y \mid y=f(x) \}

f のグラフという。



◇Ex.SetTop.3.1.2.

f \colon \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}f(x) = x^2+3x-2 で定めます。いわゆる二次関数です。このとき、f のグラフ G_f とは、

G_f = \{ (x,y) \in \mathbb{R}^2 \mid y=x^2+3x-2 \}

であり、これは実際高校数学で言う xy 平面における f のグラフを集合の形で表したに過ぎないものです。


写像の厳密な形の定義では、逆にグラフを用いて写像を定義します。正確には、写像のグラフになるような X \times Y 部分集合こそが写像であると定義します。


◆Def.SetTop.3.1.3.

X,Y を集合とし、G_fX \times Y の部分集合とする。

G_f が次の2つの性質を満たすとき、f=(X,Y,G_f) を写像と言い、f \colon X \rightarrow Y と表す。また、元の対応を x \mapsto f(x) と表す。

\forall x \in X \, \exists y \in Y \, \mathrm{s.t.} \, (x,y) \in G_f
((x,y_1) \in G_f \land (x,y_2) \in G_f) \Rightarrow y_1=y_2



Rem.1. 厳密な定義は、結局のところ最初の素朴な対応規則としての写像の定義をものものしく言い替えたに過ぎないものです。ですから、普段はまったく意識しないで対応規則だと思ってしまってよいです。


写像の相等を次のように定義します。


◆Def.SetTop.3.1.4.

写像 f=(X,Y,G_f) と写像 g=(X',Y',G_g) が等しいとは、集合として (X,Y,G_f)=(X',Y',G_g) が成り立つこととする。



Rem.2. f \colon x \mapsto f(x), g \colon x \mapsto g(x) と表せば、写像が等しいとは、X=X',Y=Y' かつ

\forall x \in X, f(x)=g(x)

であるということです。

これは素朴な場合の定義とほとんど同じですが、上の定義の場合には一点、Y=Y' が要求されていることに注意しましょう。

例えば、

f \colon \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R},f(x)=x^2
 g \colon \mathbb{R} \rightarrow [0, +\infty ),g(x)=x^2

は任意の x \in  \mathbb{R} に対して f(x)=g(x) が成り立っていますが、行き先について \mathbb{R} \neq [0, +\infty ) なので写像としては等しくないと(上の定義では)考えます。

しかし、行き先の集合についてさほど気にしない文脈では、任意の定義域の元について行き先が等しいことをもって写像を等しいと考える流儀もあり、これも一般的です。


 

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