どこまでが高々可算集合なのか?
自然数全体の集合 の濃度を
と表し、濃度が
以下の集合を高々可算集合と言うのでした。
可算の濃度 は、実は最小の無限の濃度です。
なぜなら、もし が無限集合ならば、相異なる元
を無限に取ることができて、写像
を
で定めれば、
は単射となるので、
となるからです。
では、果たしてどこまで大きな集合が高々可算集合となるのでしょうか。
まずは一般的事実を示し、さらに例を見ていきましょう。
高々可算集合に関する一般的事実
次が成り立ちます。
◆Prop.Set&Top.2.16.1
(ⅰ) を高々可算集合とする。このとき、
は高々可算集合である。
(ⅱ) は高々可算集合であり、
は高々可算集合の族とする。このとき、
は高々可算集合である。
■Prf.
(ⅰ)
数学的帰納法より、 の場合に示せば十分である。
(一般の場合は、 と見て、
の場合の結果を適用すれば示せる)
高々可算集合の定義より、 から
への単射
が存在する。
そこで、次の写像
は単射である。
したがって、 であるから、
が可算集合であることを示せばよい。
ここに、次のような写像 を考える。
図式すると以下のような対応である。
すなわち、 の元を
で
の値が小さい順に並べて、それぞれに自然数が対応しているような写像が
である。
は全単射となる。
したがって、 であるから、示された。
Rem.
をきちんと式で表すと、
となるような写像である。
考え方は、 となる
が
の
個あるので、
を定義する際の
の元で、
が何番目に来るかを考えれば、
番目に来るから、
は並び順で
の
個後になるので、このように定義される。
さて、一般の に対して
を求める。
とすると、
のとき、
である。
ここで、 となるような自然数
を求めると、
この区間の幅は なので、この不等式を満たす自然数
はただ一つ存在する。その自然数を
として、
に代入して、
より、
よって、
ただし、 は
を満たすただ一つの自然数
(ⅱ)
(ⅰ) の結果より、 は高々可算集合である。ここで、各
は高々可算集合であるから、全射
が存在する。
写像 を
と定めると、各
が全射であることから、
は全射である。
したがって、 となるから、示された。 □
この事実を使って、いくつか集合を見ていきましょう。
◇Ex.Set&Top.2.16.2
整数全体の集合 が可算であることは既に見ました。
有理数全体の集合 も可算になります。
写像 を
で定めると、
は全射です。
一方、Prop.Set&Top.2.16.1.(ⅰ)より、 は可算集合なので、
も可算集合となります。
◇Ex.Set&Top.2.16.3
整数係数の方程式
の解となる複素数のことを代数的数と言います。解とならない複素数のことを超越数と言います。
代数的数全体の集合が可算集合であることを示しましょう。
まず、整数係数の多項式全体の集合を と表し、
次多項式全体の集合を
と表します。
各次数 について、整数の組
を定めれば整数係数の方程式は定まりますから、
写像 を
と定めれば、
は全射です。
Prop.Set&Top.2.16.1.(ⅰ)より、 は可算集合ですから、
は可算集合となります。
したがって、Prop.Set&Top.2.16.1.(ⅱ)より、
は可算集合です。
ところで、代数的数全体の集合は、次のように表すことができます。
さて、 次方程式は高々
個の解しかもたないことが知られています。(代数学の基本定理)
すなわち、 は高々
個の元しか持たない有限集合です。
したがって、 が可算であることより、再びProp.Set&Top.2.16.1.(ⅱ)から、代数的数全体の集合
は可算となります。
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