大学数学

集合.1 集合と元(要素)、よく使う集合

大学の数学書がなかなか初学者に読めない理由

いざ興味を持って大学レベルの数学の教科書を開いてみるけれど、高校数学までで見たことのない記号がいきなり出て来てその意味がまったくわからず、解説もないので数学書が読めない……という経験をしたことがある方もいるかと思います。

実は数学書には随所に”お約束”があり、これを理解していないとまともに読み進められないようになっています。特に集合に関する”お約束”が多いです。

この”お約束”から解説している数学書はもちろんあるのですが、集合と位相という一般人には見慣れない名前の分野の本であるため、初学者が自力でこれが初歩の本であると辿り着くのは難しいと思います。

今回からは、集合と位相について基本的なことを一通り学んでいきましょう。

予備知識としては、論理記号をよく使うので、この前のセクションである論理記号を押さえておいて下さい。高校数学の知識はそこまで深くは必要ありませんが、あれば役に立つとは思います。

なお、他の数学の分野(とりわけ代数学)を学ぶ上で最低限必要と思われることしかあまりやらないつもりですので、まったく網羅的ではありません。ご注意下さい。

ちなみに省くものの、集合と位相という分野特有の定理にも色々面白いものがあります。詳しいことを知りたい方は、やはり専門書を紐解くのがよいでしょう。このページはあくまで概説とか理解の補助のために使って欲しいと思います。

集合と元

集合とは、「ものの集まり」のことです。(本当は公理的集合論という分野で集合の厳密な定義がされているのですが、難しいのでここでは置いておきましょう)

「ものの集まり」の範囲ははっきりしていないといけません。「可愛い幼女の集まり」は、「可愛い」と「幼女」の定義がはっきりしない限りは集合ではありません。「大きい自然数の集まり」も、「大きい」の定義をはっきりさせないと集合にはなりません。

一方で、「自然数の全体」「偶数の全体」「x+1=0 を満たす実数 x」などは集合になります。

集合は普通、大文字で表します。

X,Y,Z,A,B,C,…

集合 X を構成する一つ一つのものことを元(げん)もしくは要素と言います。高校までは要素と言うことが多いですが、大学以上ではと言うことの方が多い気がします。

元は普通、小文字で表します。

x,y,z,a,b,c

x が集合 X の元であるとき、x は X属するとか含まれるとか言います。記号ではこのように表します。


Def.SetTop.2.1.1.

xX に属するとき、x \in X と書く。


逆に、属さないときはこのように表します。


Def.SetTop.2.1.2.

xX に属さないとき、x \notin X と書く。


また、何も元を含まない集合のことを空集合と言います。空集合は \emptyset で表します。


Def.SetTop.2.1.3.

何も元を含まない集合を空集合といい、\emptyset で表す。


集合の記法

集合の書き表し方ですが、中括弧を使って

X= \{ 1,2,3 \} , Y = \{ 2,3,5 \}

のように書き表します。

自然数全体の集合のように、元をすべて書き出せない場合は、\dots を使って

\{ 1,2,3, \dots \}

のように書き表します。

実数全体の集合のように、元を書き並べることもできない場合は、| を使って

\{ x \mid x は実数 \}

のように条件を使って書き表します。数学で扱う集合は、一般に元を書き表すことができないものが多いため、この記法を一番多く使います。

よく使う集合

“お約束”の話になります。数学書では冒頭にまとめて述べられるか、あるいはしばしば断りなしに以下の記号が用いられます。

一覧にしてまとめておきましょう。いくつかわからないものがあるかもしれませんが、後々わかるようになるので気にしないで下さい。


Def.SetTop.2.1.4. (よく使う集合の一覧)

\emptyset:空集合
\mathbb{N}:自然数全体の集合(0 を含む流儀と含まない流儀がある。当ページでは含むとする
\mathbb{Z}:整数全体の集合
\mathbb{Q}:有理数全体の集合
\mathbb{R}:実数全体の集合
\mathbb{C}:複素数全体の集合

\mathbb{N}^{+}1 以上の自然数全体の集合(0 を含まないことをはっきりさせたいときに使う)
\mathbb{Z}^{+}:正の整数全体の集合
\mathbb{Q}^{+}:正の有理数全体の集合
\mathbb{R}^{+}:正の実数全体の集合

\mathbb{R}^nn 次元実数空間(ユークリッド空間)
\mathbb{C}^nn 次元複素数空間
\mathbb{S}^n = \( \{ (x_1,x_2, \dots , x_{n+1}) \in \mathbb{R}^{n+1} \mid x_{1}^{2}+x_{2}^{2}+ \dots +x_{n+1}^{2} =1 \} : n 次元球面(集合としては n+1 次元実数空間の部分集合だが、球「面」について考えているので次数が 1 下がる)

a,b \in  \mathbb{R},a \leq b とするとき、
[a,b] = \{ x \in \mathbb{R} \mid a \leq x \leq b \}閉区間
(a,b) = \{ x \in \mathbb{R} \mid a < x < b \}開区間
(a,b] = \{ x \in \mathbb{R} \mid a < x \leq b \}半開区間
[a,b) = \{ x \in \mathbb{R} \mid a \leq x < b \}半開区間
(a, +\infty) = \{ x \in \mathbb{R} \mid x>a \}
[a, +\infty) = \{ x \in \mathbb{R} \mid x \geq a \}
(-\infty, a) = \{ x \in \mathbb{R} \mid x<a \}
(-\infty, a] = \{ x \in \mathbb{R} \mid x \leq a \}

\mathbb{Z}[x]:整数係数の一変数多項式全体の集合
\mathbb{Q}[x]:有理数係数の一変数多項式全体の集合
\mathbb{R}[x]:実数係数の一変数多項式全体の集合
\mathbb{C}[x]:複素数係数の一変数多項式全体の集合

\mathbb{Z}(x) = \{ f(x)/g(x) \mid f(x),g(x) \in \mathbb{Z}[x], g(x) \neq 0 \}:整数係数の一変数有理式全体の集合
\mathbb{Q}(x) = \{ f(x)/g(x) \mid f(x),g(x) \in \mathbb{Q}[x], g(x) \neq 0 \}:有理数係数の一変数有理式全体の集合
\mathbb{R}(x) = \{ f(x)/g(x) \mid f(x),g(x) \in \mathbb{R}[x], g(x) \neq 0 \}:実数係数の一変数有理式全体の集合
\mathbb{C}(x) = \{ f(x)/g(x) \mid f(x),g(x) \in \mathbb{C}[x], g(x) \neq 0 \}:複素数係数の一変数有理式全体の集合

\mathbb{Z}[x_1, x_2, \dots ,x_n]:整数係数の n 変数多項式全体の集合
\mathbb{Q}[x_1, x_2, \dots ,x_n]:有理数係数の n 変数多項式全体の集合
\mathbb{R}[x_1, x_2, \dots ,x_n]:実数係数の n 変数多項式全体の集合
\mathbb{C}[x_1, x_2, \dots ,x_n]:複素数係数の n 変数多項式全体の集合

\mathbb{Z}(x_1, x_2, \dots ,x_n):整数係数の n 変数有理式全体の集合
\mathbb{Q}(x_1, x_2, \dots ,x_n):有理数係数の n 変数有理式全体の集合
\mathbb{R}(x_1, x_2, \dots ,x_n):実数係数の n 変数有理式全体の集合
\mathbb{C}(x_1, x_2, \dots ,x_n):複素数係数の n 変数有理式全体の集合

I,J が何の断りもなしに使われている場合、添字の集合を表すことが多い。

U,V開集合を表すときに使われることが多い。


 

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