大学数学

論理記号.6 否定の作り方

否定の作り方~一定のルールに則って否定を作ろう~

数学において、命題の否定を用いる場面は頻繁に出て来ます。

例えば、背理法は「ある命題の否定を仮定して、矛盾を導くことでその命題が正しいことを示す」方法です。

また、命題とその対偶は同値なので、ある命題が真であることを示そうとするとき、元の命題の代わりに対偶が真であることを示すことはよくあります。対偶は元の命題の否定形で書かれます。

なので、否定を正しく作れることは非常に大切です。

しかし、命題の形が複雑になってくると、混乱してしまって否定を正しく作れない方がいます。

そこで今回は、否定の作り方のコツをお伝えしましょう。

ポイントは

  1. 命題を論理式の形で書き表すこと
  2. 否定を作るときは、一定のルールに則って、論理式を手前から順に書き換えていくこと

です。論理式の形で命題を書けると、複雑な命題でも正しく否定を作りやすくなります。

命題を論理式で書き表す際のポイント

基本的には文章を逐次論理記号に置き換えていけば大丈夫です。以下の2つのことに気をつけて作ってみて下さい。

1.数学の命題は仮定と結論の形で書かれることが多い。何が仮定で何が結論かをしっかりと認識すること。(仮定)\Rightarrow (結論)が1つの基本形。もう1つは同値の場合で、(命題 P\Leftrightarrow (命題 Q )の形になる。
2.「任意の」と「~が存在する」によく注意を払うこと。明示的に書かれていないことも多く、文脈から読み取らなければならないこともある。特に「任意の」と「~が存在する」が入り混じっている場合、これらの順序には気を付けること。順序が違えばまったく違う意味になる。

否定の作り方のルール

命題を論理式の形で書けたら、手前から次のルールに沿って否定を作っていきます。

1.命題 P否定 \lnot P に置き換える
2.二重否定=肯定より、命題 \lnot QQ に置き換える
3.\land\lor に置き換え、\lor は \land に置き換える
4.P \Rightarrow Q( \lnot P) \lor Q と同値であることを踏まえて、P \land (\lnot Q) に置き換える
5.\exists x \in X\forall x \in X に置き換え、\forall x \in X は \exists x \in X に置き換える( x \notin X としないことに注意

では、いくつか例をやっていきましょう。


Ex.SetTop.1.6.1.

「実数値関数 f(x)x=a で連続であること」は、次のように論理式で書けます(これはまだ覚えなくていいです)

\forall \epsilon >0 \, \exists \delta >0 \, ,( |x-a|< \delta \Rightarrow |f(x)-f(a)| < \epsilon )

こちらの否定を作ってみましょう。

ステップ1  \forall \epsilon >0 を  \exists \epsilon >0 に置き換える
ステップ2  \exists \delta >0 を  \forall \delta >0 に置き換える
ステップ3  ( |x-a|< \delta \Rightarrow |f(x)-f(a)| < \epsilon ) を  ( (|x-a|< \delta) \land (|f(x)-f(a)| \geq \epsilon) ) に置き替える

以上を繋げて、全体の否定が完成します。こうなります。

 \exists \epsilon >0 \, \forall \delta >0 \, ,( (|x-a|< \delta) \land (|f(x)-f(a)| \geq \epsilon) )



Ex.SetTop.1.6.2.

V,W を体 K 上の線形空間とするとき、写像 f:V \rightarrow W が線形写像であるとは、任意の v ,w \in V , a,b \in K に対し、

f(av+bw) = af(v)+bf(w)

が成り立つことである。(これはまだ覚えなくていいです)

これを論理式で書くと、

\forall v,w \in V , \forall a,b \in K,  f(av+bw) = af(v)+bf(w)

となります。こちらの否定を作ると、

 \exists v,w \in V , \exists a,b \in K,  f(av+bw) \neq af(v)+bf(w)

となります。



Ex.SetTop.1.6.3.

n 次元ユークリッド空間 \mathbb{R}^n の部分集合 U が  \mathbb{R}^n の開集合であるとは、任意の点 x \in U に対して、ある実数 r >0 が存在して、任意の点 y \in \mathbb{R}^n について、|y-x|<r ならば y \in U であることである。(こればまだ覚えなくていいです)

これを論理記号で表すと

\forall x \in U,\exists r>0, \forall y \in \mathbb{R}^n,(|y-x|<r \Rightarrow y \in U )

となります。こちらの否定を作ると、

\exists x \in U,\forall r>0, \exists y \in \mathbb{R}^n,((|y-x|<r) \land (y \notin U) )

となります。


以上で論理記号の基本を終わります

以上で論理記号の基本について、数学を学んでいく上で最低限のことは述べたと思いますので、終わりにしたいと思います。ひとまずはお疲れ様でした。

本当は全然こんなものではなく、もっと色々な記号や概念などがあるのですが、大体の数学をやっていく上では、「かつ」「または」「任意の」「~が存在する」を含んだ論理式を操ることができて、否定や対偶などを正しく作れれば十分だと思います。

もしこの分野について詳しく知りたい方は「論理記号学」という名前の本を読んでみて下さい。いつか当ページでも本の紹介をしようかと思います。

次は集合の基本についてやっていきます

やっと論理記号が終わったところですが、残念ながら、論理記号だけでは大学数学をやっていくのに十分とは言えません。

論理記号のところでもいくつかことわりなく出て来てしまったのですが、集合と位相という分野について基本を押さえておく必要があります。(鶏が先か卵が先かという話になります。論理記号を集合なしで説明するのも難しいし、集合を論理記号なしで説明するのも難しいのです。許して下さい)

位相はそんなにすぐには使わない分野もありますので、いくらか後回しにしてもよいでしょう。だとしても、集合の基本的なところについては理解しておかないとすぐに立ち行かなくなります。

そこで、次回以降は集合について基本的なところを解説していきます。ここまでに出て来た論理記号をふんだんに使って定義していきますので、よく理解してから先に進んで下さい。引き続きよろしくお願いします。

 

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